カザト マリ
  風戸 真理   短期大学部 生活創造学科   専任講師
■ 標題
  モンゴル牧畜社会をめぐるモノの生産・流通・消費
■ 概要
  本書は、中国内モンゴルとモンゴル国にまたがって暮らすモンゴル系の人びとの経済活動、とくにモンゴル牧畜にみられる畜産物の流通に焦点をあてた人類学的研究であり、モンゴル高原地域における物流システムの特徴とその変化を、国家の体制およびグローバルな経済システムとの関係のなかで議論することをめざす。
 モンゴルの牧畜社会と国家体制やグローバルな経済システムとの関係は現代に始まった問題ではない。モンゴルの牧畜は、前近代においても広域的な経済システムや国家体制の中で営まれてきた。また、20世紀前半より近代国家への取り込みが始まり、同時に広域な経済システムへの接合されてきた。
 本書収録の5本の論文を通して本書が明らかにした事実として、モンゴルにおいては基本的に、時代を下るにつれて流通の対象となる畜産物の種類が増加し、またモンゴルへ流入する物資の品目数および絶対量が増加している傾向が指摘できる。またこの増加プロセスは、社会主義体制の導入や市場経済の浸透などといったイベントを画期として、非連続的な変化を遂げてきた。
 次に、モンゴルにおける「グローバリゼーション」の展開にみられる特徴を3つ挙げたい。第一に、貨幣(あるいは広域的な流通)による影響を大きく受ける領域と、あまり変化しない領域が存在する点である。国家をはじめとする近代的制度がモンゴル牧畜民に対して及ぼす影響力は拡大しているが、牧畜民は可能な限り自らの持つ文化的ストックを利用しつつ対応してきた結果である。第二に、モンゴルの生産・消費・流通のあり方からは、モンゴル人がグローバルな/新しいテクノロジーを積極的に受け入れて、これを彼らなりのやり方で使いこなしてきたことがわかる。第三に、彼らには必ずしも専業化という形で経済効率を追求しない傾向も見られた。
   共著   東北アジア研究センター叢書   東北大学東北アジア研究センター   第58号   pp.1-179   2016/12