カザト マリ
  風戸 真理   短期大学部 生活創造学科   専任講師
■ 標題
  モンゴル国における住居フェルト生産の変遷―工業製品と手作業の製品―
■ 概要
  風戸真理・尾崎孝宏・高倉浩樹共編(2016)『モンゴル牧畜社会をめぐるモノの生産・流通・消費』東北大学東北アジア研究センターの1章である。
 本論は、モンゴル国の畜産物のなかでも毛をとりあげ、毛製品の代表であるフェルトに焦点をあて、羊毛の流通とフェルトの生産は、20世紀以降の国家の政治経済体制の変化のもとで、どのような影響を受け、どのように変化してきたのか、とくにモンゴルの近代化にともなう工業化とフェルト生産はどのような関係にあるのか、を議論した。
 結論として、変化は住居用フェルトの生産様式にみられることがわかった。つまり、社会主義期期以前は牧民の手作業による生産が主であったが、社会主義期に半機械化された工場での工業的な生産に移行した。そして、民主化直後は工場生産の減退にともない、一時的ではあるが、手作業による生産が需要に応えた。近年、再び工場製のフェルト生産が活発になり、生産の中心を担うようになった。
一方で、住居フェルトの生産においては時代を通して持続してきた諸要素がみいだせる。それは原料が天然の羊毛であること、フェルトを手作業で作る技術の継承、住居フェルトのおおまかな仕様・デザインの3点である。
 以上から、工業部門のフェルト生産と牧民のフェルト生産は相補的な関係にあるということを指摘した。既存の研究は、牧民のフェルト生産を伝統的で文化本質的なものとして時代状況や社会的な文脈と無関係に論じてきた側面があるが、本論は工場生産と牧民によるフェルト生産の両方に焦点を当てることで、両者の相補的な関係を明らかにした。
   単著   モンゴル牧畜社会をめぐるモノの生産・流通・消費   東北大学東北アジア研究センター   東北アジア研究センター叢書 第58号   pp.5-27   2016/12