ミヤザキ ヤスシ
  宮崎 靖士   社会福祉学部 共通部門   教授
■ 標題
  非共約的な差異へむけた日本語文学のプロジェクト―一九四一~四二年の金史良作品―
■ 概要
  本論では、金史良が一九四一~四二年にかけて発表した日本語文学作品に認められる表象傾向を明らかにした。それは、一人称の語り手、もしくは焦点化される作中人物とは思想・立場・世代等を異にするが故に、露悪的もしくは戯画的な描写を施され差異化される周辺人物に、自らが依拠すべき共同性を「朝鮮人」に求めるメンタリティーが委ねられ、その結果、作中に、一枚岩的ではない(=非均質的な)「朝鮮人」の表象と、「日本」への同化から距離を保ち得る差異の領域が定着されるというものである。そのような試みは、四一年前半にかけての社会的・思想的状況の中で、時流に抗し得る数少ない方途の一つであったとともに、「日本語」による表象を逸脱するものとして植民地支配の経験を定着した実践例として、今日改めて評価されるべきものである。
   単著   日本近代文学   日本近代文学会   83号   pp.126,141   2010/11