ミヤザキ ヤスシ
  宮崎 靖士   社会福祉学部 共通部門   教授
■ 標題
  「公共領域」の創出へむけた金鍾漢の日本語文学活動 ―創作・編集・翻訳―
■ 概要
  本論では、金鍾漢の日本語文学活動のうち、その「史詩」と、『たらちねのうた』、及び訳詩集『雪白集』をとりあげ、その「創作」と、「編集」「翻訳」の側面に認められる事態を総合することから、金鍾漢の日本語文学活動に対する新たな評価軸の提示を試みた。まず「史詩」については、作品の解釈・理解において、「内鮮一体」をめぐる異質な立場性をひきこみ、それらの相互交渉を可能にする「場」を創り出す傾向を明らかにした。一方『たらちねのうた』に関しては、「二人の母」を分有した経験を、唯一であるべき「母」の喪失として意味づけ、自身の創作モチーフを「永遠の母」への郷愁とする点が注目された。また『雪白集』の「序詩」からは、「異郷」としての日本語の中に仮構された「ふるさと」=朝鮮へと読者を導きいれる試みが看取でき、その構成からは自らの日本語創作を到達点としつつ、「日本語」という異郷でこそ現前する「ふるさと」として、近代朝鮮詩史を系譜的に構築する傾向が確認できた。そのような金鍾漢の日本語文学活動は、日本語表現を、「内地」の側の立場性にも「朝鮮」の側のそれにも収束させず、表象における「第三項」、あるいは「公共領域」として構築しようとする傾向としてまとめられる。
   単著   国語と国文学   ぎょうせい   第88巻6号   pp.53,67   2011/06