ミヤザキ ヤスシ
  宮崎 靖士   社会福祉学部 共通部門   教授
■ 標題
  牧洋『善霊』論―その自己批評性と、日本語認識の多層性をめぐって―
■ 概要
  牧洋の日本語テキストの代表作とされる『静かな嵐』には、「皇民化」へ向けた努力を続ける主人公の「成長物語」とよべるプロットがあり、それは、日本語創作を自身の「皇民化」の手段とした牧洋の創作行為の傾向とパラレルなものとなっている。ただし、その「後日譚」として発表された『善霊』では、〝自己の向上〟をモットーとする主人公が、『静かな嵐』とは正反対に、「皇民」としてふさわしい人格形成には向かわず、私的な理由から朝鮮を離れるに至る点が注目される。そのような動向は、過去の自作と「国語普及運動」の潮流とを相対化しようとする批評的な試みとして理解できる。そしてその背景には、日本語をあくまで「皇民化」を目的とした文学形成の手段に限定する立場や、日本語創作の価値を流通マーケットの大きさに求める指向が存在していた。
   単著   国語国文研究   北海道大学国語国文学会   第140号   pp.1,16   2011/09