ミヤザキ ヤスシ
  宮崎 靖士   社会福祉学部 共通部門   教授
■ 標題
  柳田國男『山島民譚集(一)』論
―その論説形態と同時代状況との接点をめぐって―
■ 概要
  本論では、『山島民譚集(一)』の特色が、ある伝説の変遷に関して、それを複数の伝承や信仰の相互関連によるものとし、かつそれらの連関を偶然的なものとしつつ、更に巫祝や呪術に関わる職業者による媒介を含む特定の条件のもとで展開したものとして記述する点に求められることを、その論説形態の検討から明らかにした。そのようなテキストの特質を、日露戦争以降、愛国心や郷土愛の涵養への要請を背景として行われた伝説蒐集事業、及び国民性の究明を目的とする芳賀矢一における伝説研究の傾向と対照した。すると、上述のような論説は、伝説の過去と現在と未来の間に、いわば継続する本質を保証しないものであり、例えば現在の立場や視点を投影することで過去の伝説の姿を理解し、過去と現在の「日本人」の間に継続する本質を見出すことを困難にしていることがわかる。そのような言説は、「日本」における歴史的な事象を対象としつつ、過去と現在の間の同質性を前提とする愛国心や郷土愛の涵養へと短絡的には収束しない、広義の文化史に関わる研究領域を開拓する試みとして理解できた。
   単著   現代民俗学研究   現代民俗学会   7号   pp.43-58   2015/03