ミヤザキ ヤスシ
  宮崎 靖士   社会福祉学部 共通部門   教授
■ 標題
  張文環の日本語文学作品における表象傾向の分有と深化
――一九四〇~四三年を対象として――
■ 概要
  本論では、張文環が右の期間に発表した日本語文学作品のうち小説を対象として、その表象傾向の確立とそれ以降の展開、及びそれが同時代状況の中でもち得た意義を明らかにした。表象傾向については、四〇年に発表された『山茶花』が、共同体を舞台とする物語の中に、女性の生き方をめぐる物語と、進路選択をめぐる物語を包含していることを論じ、それ以降の短編作品では、この三つの物語が個々に取り上げられて展開されていることを跡付けた。そこで注目されるのは、個々のテキストのプロットが、異なる方向性をもつ、複数の要素の偶然的な連関によって織り成されていること、そして更には、主人公の生き方や主題的な事象に対する特定の評価がテキスト中に伴われないことである。そのような表象傾向がもつ意義については、同時代の読者に、共同体、女性、進路選択という問題系の存在を示し、それらを主体的に考える個人の確立を指向した点に求められる。
   単著   北星学園大学文学部北星論集   北星学園大学   第54巻第2号   pp.62-45   2017/03