サイトウ サヨ
  斎藤 彩世   文学部 英文学科   専任講師
■ 標題
  Seeking for Sexual Identity: Homosexuality and Homoerotic Desire in Henry James's Novels
■ 概要
  ヘンリー・ジェイムズの作品における同性愛表象はどのように変遷していったのか、転換点と思われる10作品を中心に考察した。最初の幽霊物語から『ある婦人の肖像』までは異性愛の中に見られる同性愛を主題として作品を書き、『ボストンの人々』や『カサマシマ公爵夫人』では社会の中で同性愛がどのように挫かれていくのかを作品に描いたことを明らかにした。その後『あちらの家』や『ポイントンの蒐集品』、『ねじの回転』などを発表したが、これらには、ワイルド裁判によってかき立てられた不安と個人的な同性愛体験などによる作風の変化が見られる。この時期の作品では、身体的接触の描写が増すと同時に、婉曲法が多用されるようになる。それまでの作品より同性愛が主題として取り上げられることが多くなる一方、その主題を半分隠して描くようになっているのだ。20世紀に入ると、ジェイムズは『大使たち』や『鳩の翼』などの傑作を発表するが、これらの作品には愛情の対象と距離を保ち、芸術に昇華させることを決意する同性愛者の審美家・芸術家が描かれている。女性を愛したいと願いながらも愛せず、男性に惹かれながらも積極的に関係を構築することを恐れていた自らの複雑なセクシュアル・アイデンティティをジェイムズが創作を通して受け入れていった様子を明らかにした。
   単著   2016/03