オオハラ マサアキ
  大原 昌明   経済学部 経営情報学科   教授
■ 標題
  就労支援事業会計処理基準の吟味
■ 概要
   本論文は、就労支援会計処理基準を吟味することを通して、非営利法人にかかわる会計基準の方向性を考察したものである。
 就労支援事業会計処理基準の特徴は、一法人一会計基準を前提にし、「一事業」に焦点を当てている点にある。また、この会計処理基準は、最近の非営利法人会計に共通に見られるディスクロージャー指向というよりも管理会計(原価管理)指向である点も特徴である。
 固有の目的を持って設立される法人の特異性を認め、さらに各法人固有の会計基準を前提にしながらも、事業の実施主体を限定しない制度設計は、会計制度の横断的統合化という示唆を与える。
 とはいえ、これはあくまで各法人固有の会計基準を有するという前提である。NPO法人には、現時点で会計基準は存在しない。また、法人に統一的計算書類の作成を求めることから、小規模零細法人においては、追加作業を強いることにもなっている。さらに、管理会計指向であることから、広範なステークホルダーに対するディスクロージャーに関する規定もなければ、作成の有無に関するチェック機能も十分ではない。
 会計基準に違いがあるさまざまな法人形態を対象に、一事業に限定して会計処理基準を統一化するというあり方は、競合の時代の会計制度のあり方にひとつの方向性を提供するものであろう。とはいえ、統一化のひとつの目的を、根拠法が異なる法人で行われる同一事業の比較可能性に求めるならば、広範なステークホルダーに対するディスクロージャーを求めない現在のあり方に改善の余地があるように思われる。また、管理会計目的で追加的会計処理作業を求めることは、中小零細法人にとって、本来事業を圧迫している可能性もある。これらのことから、会計処理基準に対する実務上の有効性に疑問の余地が残る。これらについて、検証と検討が必要であろう。
   単著   北星論集   北星学園大学   第50巻第1号   pp.39-52   2010/09